正方形に近い土地に家を傾けて建築し、真南に大きな窓が向くように建てている家をたまに見かけます。すべての家が道路に平行に並んでいるのに、1軒だけ斜めに傾いています。まだ、このような家は珍しいため浮いてしまいます。しかし、このように配置し、庇や軒をしっかり出すことで、夏冬ともにかなり電気代が節約できると思われます。
夏と冬の電気代の平均値
世帯別の冬季と夏季の電気代の平均値です。
このうち夏は冷房、冬は暖房が主となる家がほとんどです。冬は石油ファンヒーター、ストーブを使用している家庭がかなりあるため、エアコンだけで暖房を賄っている場合は、この平均より電気代がかなり高くなるでしょう。いかに、冬場の日射取得をするかが、ポイントになってきます。
太陽高度からみる軒や庇の考え方
小学校の理科で習った内容ですが、冬は東南から太陽が昇り南西に沈みます。そのため、太陽の日差しは低い位置から差し込みます。夏は北東から昇り、北西に沈む。そのため太陽の日差しは上から差し込みます。
そのため、男の子は夏に帽子を被った場合には影になりますが、冬は日差しを防ぐことはできません。家の場合は庇が帽子の役割を担っています。
夏は庇で日射遮蔽をして、冬は角度が低いので日が部屋の中まで入り込むということです。
太陽高度や南中時刻は地域差で大きく乖離
このサイトを使うと、日本各地の365日それぞれの時間帯の太陽の角度が分かります。
例えば、下記は根室市の情報ですが、カーソルを持って行くと角度が分かります
日本は南北に長いため、同じ季節の同じ時間帯でも太陽高度が思ったより変わります。もちろん日の入り、日の出時刻が違うように南中時刻もかなり違います。
東京 南中時刻 11:42 太陽高度 77.78度
根室 南中時刻 11:18 太陽高度 70.38度
想像以上に地域差があるため、軒や庇をどれぐらい出すというのは、しっかりと把握すると後悔が少なくなります。図面を貰ったあとなどに分度器で線を引いて、日がどの位置まで差し込むのか確認すると良いです。シミュレーションソフトなどを使わなくとも、隣の家などの影が複雑でなければ、充分に把握できます。
東西南北での日射取得、遮蔽の考え方
また太陽の動きから、真昼より午前10時や午後2時のほうが日差しの角度が緩いということと、夏と冬で太陽の昇る場所と沈む場所に大きな開きがあることが分かります。そのため、夏は北西に日が沈むので、夏の西日が厳しいというときは時間帯として午後2時~4時ぐらいということになります。そして、午後5時ぐらいになると、冬には全く日が当たらない家の北側の窓に22度ぐらいの角度で日が差します。(その方向に家など遮る建築物などがない場合)
それゆえに、このこと(場所、方位、高度)を考慮し、南側(真南でなくとも)庇の長さや東西南北の窓の種類(断熱タイプor遮熱タイプ)を選択すると良いです。
南側の窓から得られる日射量は夏より冬が多い
太陽高度が低く、南の鉛直面の日射量が増えるので冬の日射取得量は真夏より多い
202頁から引用
はじめの理科の図でも明らかなように、冬の日射取得量は多く侮れない。
この本では「夏は2140W/日の日射取得量なのに対し、冬は6500W/日も日射取得がある」との説明があるが、これは、1月の日照時間が影ができない条件の約10時間で計算している。また南面に3.3㎡の窓が6か所あると、COP3のエアコンで11700円の節約になると計算しているが、この条件はあまりにも現実的ではない。しかし、日射取得時間、断熱性能や窓の大きさに左右されるが、冬季の場合は下限として1カ月に2000-3000円程度の節約は見込めそうである。
家を真南に向けるメリットとデメリット
家を真南に向けるというのは太陽を中心に考えているため、太陽の細かな高度がやはり重要であると感じます。簡単にメリットとデメリットをまとめると。。。
メリット
- 夏は庇を設けることで日射遮蔽の面から有効的。
- 冬は日射量が増え、電気代が節約できる。
- 部屋が明るくなる。
デメリット
- 道路に対して平行に家が建たない場合は、目立つ。
- 周囲の家と揃わない向きになると変わり者に思われる。
- 北側面は冬はほとんど日が当たらない。
- 安い窯業系サイディングを使っていると北側壁に苔が生えやすい。
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