子供を学校へ行かせず、親が家で勉強に責任を持つ「ホームスクーリング」。小学生YouTuber「ゆたぼん」が中学に行かないと宣言したことで、また「ホームスクーリング」が話題になっているようです。
日本でホームスクーリングはバッシングされる
世論は「常識外れ」「国民の三大義務をどのように考えているのか」「親の躾に問題があるのでは」「こういった親子とは付き合いたくない」など手厳しい。
様々な主張
- 学校に行った方が選択肢も増え幸福になる可能性が高い。
- 家で教養がある人が教えるなら問題ない。
- アメリカの場合は、治安が悪いからホームスクーリングする。
- 集団生活が経験できなくてかわいそう。
- 絶対に大人になって後悔する。
ネット上で多かったのはこんな感じの意見でした。
むしろ、こういった意見が主流なのは当然でしょう。私たちは義務教育に疑問を持たないように教育されてきたのですから。
義務教育に疑問を持つ人たち
「バカをつくる学校」の著者であるジョン・テイラー・ガット(John Taylor Gatto)は、30年近く教員として働き、1989年、1990年、1991年に米国ニューヨーク市最優秀教師に選ばれ、1991年にはニューヨーク州の最優秀教師賞も受賞しました。
彼は、1990年のニューヨーク市の年間最優秀教師賞の受賞演説で、「学校は、ホーレス・マンなどによって、大衆の科学的管理の手段として設計されました」と述べています。義務教育は人間を政府の奴隷とし、人間を家畜化するものであると鋭く指摘しています。
義務教育に疑問を抱く親が、これから少しずつ出てくるかもしれません。実際に義務教育の学校では、本当に大切なことを教えなかったり、軽視する傾向にあります。「家庭の大切さ」「生命の尊さ」「心について」「哲学」などの内面的なこと。また「天皇の成り立ち」「政府とは何か」「税金の仕組み」「お金とは」「資産とは」「どうして戦争が起きるのか」などの外面的なことまで。
ゆたぼんの家庭はホームスクーリングではなくアンスクーリング
「ゆたぼん」ですが、不登校になる理由はレアケースなのでしょう。「宿題をどうしてしなければいけないのか」「したくないことを無理やりやらせる先生に反発」、そして学校に行くことから遠ざかっていく。たしかに、昔もこのような学生はいたのでしょうが、不登校を選択することはなかったのでしょう。今は親が強くなったのか?学校の先生が尊敬されなくなったのか?
「ゆたぼん」の父親がホームスクーリングしていると述べていました。とくに親が介入せず、好きな時に好きなことをやらせる。これは厳密に言うと、ホームスクーリングではなく「アンスクーリング」です。一般的に日本で言われるホームスクーリングとは、親が子供を家庭で教えるというパターン、もちろん通信教育なども使用するかもしれないが、学校の役割を家庭が担うということ。
ホームスクーリングは、親の計画のもと学習しますが、アンスクーリングとは、何のカリキュラムもなく、子供が興味を持ったものに対し、親が補助的に導いていくという発想です。子供側が主体であり、親が命令や指示を出すことはありません。
※アンスクーリングの考えも、もともとホームスクーリングから生まれている。そのため、米国ではホームスクーリングの中の教育方法の分類として捉えられる場合が多い。
アンスクーリングとは何か?
アンスクーリングとは、ジョン・ホルト(John Holt)が提唱したもの。彼は学校の教師だったが、学校での教育システムに幻滅し、自ら新しいアプローチで教育に臨みました。それは、「模範解答を求めるのではなく、考え方や概念に重点を置き理解してもらうこと」そのため、「テストと成績を重視しない」「ランク分けしない」といった試みをしましたが、それがもとで学校から解雇されます。それ以来、彼はホームスクーリングで改革を試みます。
※ジョン・ホルトは「ホームスクーリングの父」と呼ばれたりもします。
略歴
1923年 ニューヨーク州ニューヨーク市生まれ。
1943年 イエール大学卒業。
1943年-1946年 米海軍、潜水艦隊所属。
1946年-1952年 世界連邦運動に従事。
1952年-1953年 ヨーロッパ旅行。
1953年-1957年 コロラド州カーボンデールで教鞭を執る。
1957年-1963年 マサチューセッツ州ケンブリッジで教鞭を執る。
1963年-1967年 マサチューセッツ州ボストンで教鞭を執る。
1968年 ハーバード教育大学院客員講師。
1969年 リフォルニア大学バークレー校客員講師。
1969年-1985年 執筆・講演活動。
1977年 最初のホームスクーリングの定期刊行物を発刊。
1985年 マサチューセッツ州ボストンの自宅で癌により死去。
※John Holt GWSを参照。
「私が知っていることのほとんどは、学校で学んだことではないし、教えられたことすらありませんでした」—ジョン・ホルト
アンスクーリングは、子供が「学校教育」という形態、つまり学校のように先生と学生というような30:1の関係ではなく、家庭を通して1:1の関係で学んでいき子供と親は一緒に学び成長しくという信念から成り立っています。ホルトは、子供たちは人生の経験を通して学ぶと主張し、両親には子供と一緒に人生を送るように勧めました。
これらの考えは、教育機関、出版社、専門家に頼らずに、家庭ですなわち親と子が自分に最適な道を見つけることができるという信頼に基づいています。
それでも、アンスクーリングは、米国でもかなり批判されることが多いようです。多くの批判は、自身のやりたくないことを避けることにより社会で対応できなくなるという指摘です。これに対し支持者らは、学ぶことの好奇心が、創造性、個性、革新性を生み、却って社会での対処能力を自ら学び取っていくと主張します。
ただ、色々な教育形態が増えている段階であるからかもしれませんが、米国ではアンスクーリングを選択する親たちが増えているようです。
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