欧米では、子供部屋は自立するためにある。それに対し、日本では子供部屋は主に勉強するためにあるとされています。それゆえ、子供部屋にまず勉強机を揃えなければと思う親は多いです。しかし、早くから子供部屋に籠ると却って学力低下のリスクが高まります。
子供部屋で勉強する人は意外と少ない
小学生になると義務教育の学習が始まります。しかし、小学生(特に低学年)が子供部屋で勉強することは一般的ではないようです。中学、高校生ではどうでしょうか?家では集中できないと、昼間は学校に残ってまた図書館などで勉強する人って意外と多いようです。さらに家で勉強するといっても、あえて勉強部屋で学習しない学生は以前に比べ多くなってます。
特に子供部屋で早くから過ごすことに慣れてしまうと、親子関係が気薄になりがちで、子供が大きくなっても、家族で「歴史、政治、哲学など」について話し合い議論したりするといった機会を持つのも難しくなりがち。また子供部屋でソーシャルメディアを中心に育つ危険性が高まる。
子供部屋での勉強のデメリット
実際に家づくりをして気づいたことは、「どういう生活をしたいか」という「考え方」が「家づくり」の間取りなどに反映され、その後の生活にまで影響するということ。
一般的な親は、非認知能力よりも受験勉強を重視しがちです。しかし、受験勉強を勝ち抜くだけで生き抜く時代は終焉しました。これからますます重要視される想像力やコミュニケーション能力、考える力は家庭でこそつくものです。
そういう意味では、子供部屋で勉強してしまうデメリットもあるように感じます。
内容のポイント
- 昔の日本には子供部屋がなかった!!
- 欧米には今の日本の子供部屋に相当する部屋がない。
- アメリカでいう子供部屋は子供の自立を促す部屋。ベッドルームとの呼称から分かるように勉強する部屋ではなく、寝室として使っている。
- 日本は世界ではじめて、子供部屋を勉強部屋として使いはじめた国民!!
- 学習机は1950年代に世界に先駆けて日本で誕生した独自のもの。
- 子供部屋を勉強部屋として使っているのを真似たのが韓国、中国などの東南アジア。
高度経済成長を遂げ、国が住宅業界に支援するようになって家が大きくなると、子どものためと勉強する部屋が生まれたのでしょう。これは子供の数が減り、大家族から小家族へ、二世代・三世代家族から核家族へというこの世代の家庭や家づくりに対する考えが変わったことにも関係があるのでしょう。
静かな勉強部屋だけで学習していると、受験で周りの鉛筆の音が気になり、実力が発揮できないとの主張ですが、これは人によるのかもしれません。ただ、一人(独り)部屋という心地よい環境に慣れ過ぎると、人の目が気になり引きこもりなどの弊害が起こる可能性を秘めているのかもしれません。
親子でコミュニケーションを毎日、習慣的にとるかたちの家の使い方をしておかないと、いざ何か子供にあったときに(子供の変化)分からなくなるということがある。
30分53秒から
親が忙しく子供のことを観察できていないと、子供が悩んでいても気づかない。何気ないコミュニケーションや親に悩みを聞いてもらえることだけで、子供は壁を乗り越え、自ら解決していくのでしょう。
勉強、学習は知りたいという欲求からはじまりますが、そういった環境は、お母さんが褒めてくれる、喜んでくれるということが動機になることも多々あると感じています。特に小学生ぐらいは強いのではないでしょうか?
子供部屋は寝る場所と決めるなら、学習机は要らない訳でベッドを置くスペースだけで良いのでしょう。我が家は子供部屋がないですが、ロフトで子供が寝れるようになっています。寝るだけなら部屋という概念でなくてもよく、スペースがあればよいのです。
親の関与は重要:PISAのエビデンス
OECD生徒の学習到達調査(PISA)に対する世間の注目のほとんどは、各国の成績と学校制度の比較に集まっているが、ここでの私たちの関心は、子育ての面である。最近の調査では、生徒と親の両方が、親子の関わりについての質問を含むアンケートに回答するように求められており、この回答が、各生徒のテストのスコアに関連づけられている。
83頁から引用
親子の関係が学習調査にどう関与しているかが書かれており、親子の対話が成績に影響しているのです。
子どもと一緒に本を読むことは、数学、読解力、科学のテスト全体で16~18ポイントのスコアの増加と関連し、物語を伝えることは2~7ポイントの範囲で影響をもたらすことがわかった。興味深いことに、子どもと政治について話し合うと、テストのスコアが9~12ポイント増加した…
86頁から引用
まとめ
アップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズが、子供に対してスマホやiPadを厳しく管理していたことは有名な話です。ビル・ゲイツは14歳まで子供にスマホを与えなかったといいます。
このエピソードに対しては、テクノロジーが脳や精神に及ぼす悪影響や中毒性などに注目が集まります。ただ、同時にスマホ中毒になるということは、家族との関係、仲間との関係がどんどん気薄になります。開発側は、このことにより家族間の時間が取れなくなることを恐れていたのではないかと推測します。
スティーブ・ジョブズは、家族の時間をもっと大切にしたかったといいますし、ビル・ゲイツは娘と会話する時間がもてると週に2回も幼稚園の送迎していたらしい。また、会話のために食卓には自らもスマホを持ち込まないと決めていた。
カリフォルニア州立大学が実施した調査によると、ソーシャルメディアサイトに週58回以上アクセスした人は、ソーシャルメディアを週9回未満しか使用しなかった人と比べて、社会的に孤立し、落ち込むと感じる可能性が3倍高いことが分かっている。
Addiction Centerより引用
皮肉なことに、ソーシャルメディアに繋がると逆に孤独感を感じるというのです。早くからソーシャルメディアに依存するより、家族関係の絆がもっと大切だということでしょう。
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