太陽光パネルの原料は奴隷労働と安価な石炭火力発電で成り立っていた

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新疆ウイグル自治区の強制労働に対する人権問題が綿花、トマトに続き太陽光パネルに使われる原料のポリシリコンにまで及んでいます。特に、このポリシリコンは世界の主要生産地となっているため、問題は大きそうです。それゆえ、再生可能エネルギーと人権問題という新たな難題にどう向き合うのか?そもそも、石炭火力発電から生まれる太陽光パネルはエコと言えるのか?

安価な人件費で中国が太陽光産業の中心に

中国は2008年以降、太陽光産業で世界の中心になり、そのあとも盤石の体制を築くため、ポリシリコン工場を新疆ウイグル自治区に移しています。ポリシリコン製造に消費されるエネルギー使用量は膨大です。電気は工場の運営費の約40%を占めるとも言われます。

もうひとつ生産コストで大きいのが人件費です。中国は、すでに世界の工場といわれたときの人件費の魅力がなくなっているため、ジェノサイドと非難される強制労働で、タダ働きさせているのが現状なのでしょう。

同自治区は、石炭火力発電から得られる安価な電気代と人件費で、圧倒的な国際競争力を持つようになっていきます。

出典:中国非鉄金属工業協会

中国有色金属(非鉄金属)工業協会の統計によると、ポリシリコン工場は2017年ごろから新疆ウイグル自治区にシフトされた分かります。公開資料によると、2021年には中国のポリシリコン生産能力は567,000トンに達する予定で、世界の生産能力の85%以上を占め、新疆ウイグル自治区は国の生産能力の57%を占めます。これだけでもかなり偏る生産地ですが、さらに、ウイグル以外の場所にも強制労働が存在する可能性が指摘されるため、問題は深刻です。

ポリシリコンの人権問題経緯

昨年から新疆ウイグル自治区での人権問題に、ポリシリコンも関わりがあるとの疑惑が報道されるようになりました。しかし、このことを断定し報道するようになったのは、今年からのようです。

■1月8日
ニューヨークタイムズが、Horizo​​n Advisoryからのレポートを引用し、新疆の太陽光発電業界に「強制労働」が存在すると公表。

同日に米太陽エネルギー産業協会(SEIA)のアビゲイル・ロス・ホッパー代表兼CEOは、すでに強制労働関与に反対する共同誓約に115社以上の太陽光発電会社が誓約書に署名しており、すべての太陽光発電会社に参加を呼びかけているという声明を発表。

■1月18日
中国太陽光発電産業協会(CPIA)と中国非鉄金属産業協会シリコン支部が、ポリシリコン工場についての「強制労働」について事実は歪曲、虚構、捏造であると主張。

■2月4日
米太陽エネルギー産業協会(SEIA)は、強制労働関与に反対する共同誓約に175社以上が署名し、今年6月までに新疆ウイグル自治区から完全に撤退するよう求めていると発表。

■3月12日
米労働総同盟産別会議(AFL-CIO)の会長が、バイデン政権に対して新疆ウイグル自治区で生産されるポリシリコンを含む太陽光製品の輸入を禁止するよう求める。

■3月23日
米共和党のルビオ、民主党のマークリー両上院議員が、新疆ウイグル自治区での強制労働に関与する太陽光関連製品の依存度を示すよう、米国太陽光発電協会(SEIA)に要請。

■4月11日
ウォール・ストリート・ジャーナルが新疆ウイグル自治区の太陽エネルギープラントが「強制労働に」に関与している可能性が高いと主張。

■4月13日
ブルームバーグが、3月に記者が新疆ウイグル自治区で取材するために乗り込んだが、当局から妨害に遭った事実を報道し、ポリシリコンの輸入禁止を主張。

強制労働の背景と実態

中国当局はもともとウイグル族に対して、イスラム教の信仰へ生活習慣などへの抑圧的な政策を取っていました。しかし、年々その反感が強まり対立も深まっていきます。そして、2013年10月に北京天安門前に車両が突入して炎上した事件から表面化してきます。

マスコミに大きく取り上げられることになったのは、この事件からですが、当局が発表しているだけでもこの事件前に3件の騒乱や襲撃事件が起きています。特に2009年7月にウルムチで起きた大規模騒乱では、197人死亡、1700人以上の負傷者が確認されています。

出典:ブルームバーグ

2016年8月に新疆ウイグル自治区の首長にあたる共産党委員会書記に陳全国が就任してから、公共安全危害罪に問われたウイグル人の投獄件数が急増し始めます。また、地方に散らばっていたウイグル族の人らも検挙されたり、同自治区へ戻る動きが顕著になってきます。

これを受け、国際社会での調査は加速し、新疆ウイグル再教育収容所や拘留施設を独自に特定するようになります。新疆ウイグル自治区内に500ヶ所以上あるとされる強制収容所には、現在100万人以上のウイグル族が収容されているといわれていますが、国防総省でアジア太平洋地域の安全保障政策を統括していたランドール・シュライバー氏は、おそらくは300万人いると、かつてコメントしています。

まとめ

サプライチェーンは、消費者や販売者が出所を追跡できない仕組みです。それゆえ、ジェノサイド問題に対する日本国内の各メーカーの姿勢は様々です。

ここ数年、住宅業界でも太陽光パネル普及速度が価格低下により凄まじく、政府も住宅の太陽光パネルの義務化に舵を切る動きを見せています。しかし、一部の人が太陽光パネルで投資するのと違い、住宅にパネルを義務化すると、設置したは個人は自身を正当化したくなるものです。

戦略とは長期的なものです。太陽光パネルが、いつの間にか中国が主導する産業になっていたことをもっと冷静に見つめ直すべきだと感じます。

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