和室が落ち着くのには理由があった~照明計画はグレアを抑えて反射率を意識する

設備
スポンサーリンク

部屋の雰囲気が180度ほど変わるともいえる照明計画。最近の流行りは、ダウンライトや間接照明、スポットライトなどのようです。新築された家を見ると、カーテンの中からこぼれてくる灯りの8-9割は電球色のオレンジです。

「陰翳礼讃」「新・陰翳礼讃」について

かつて照明デザイナーの必読書と言われた谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」であるが、最近は建築家の一部でも必読となっているようだ。同氏は陰翳の条件として、静かな場所など細かなことも述べているが、暗い部屋がオシャレで落ち着くということだけが独り歩きしているようにも思える。

紫綬褒章を受章した照明デザイナーの石井幹子氏は「新・陰翳礼讃」を出版するほど、谷崎氏に影響を受けたのでしょう。2人とも影を芸術として捉えているように感じます。

「陰翳」のなかに日本独自の美しさを見出しているのです。建築、庭、食卓や文化のなかの能や歌舞伎など生活の至る所に「陰翳」を発見しています。石井氏の作品は、「ライトアップ姫路」や「長野灯明まつり」など全国各地で展開されています。

家の中での「陰翳」とは、和室にある落ち着きであるように感じます。

TANOSUから引用
長野灯明まつりから引用

和室が落ち着くのには理由があった

日本人の平均的な肌の色の反射率は50%といわれる。なぜ和室に入ると心が落ち着くかといえば、柱・畳・天井材など、使用されている材料の反射率が肌の色と同じ50%ぐらいの材料に囲まれているからだといいます。人間に限らず生き物の多くは保護色に囲まれているとき安心できるのです。
(参照:HITACHI)

ベガハウスから引用

反射率は色によって変わるため、白い壁には濃い目のフローリング、ベージュの壁にはもう少し落ち着いた色のフローリングというように使い分けると、反射率の観点では落ち着いた部屋になります。

住まいのあかり計画から引用

昼間に照明がなくても間接的に当る光による雰囲気で落ち着いた空間を演出しています。白い壁と床はモルタル仕上げでしょうか。暗めの色を選択することにより陰影が美しく、空間の調和感で落ち着きのある部屋になっています。

ベガハウスから引用

和室の隣の白を基調にした部屋とのコントラストが、和室独特の落ち着いた空間をより増幅させています。明暗がはっきりしていることと、一段下がった畳の空間で、昼間なのに電球の灯りが美しく映えています。

ベガハウスから引用

グレアを抑える照明計画

影が雰囲気をつくることは分かりましたが、ただ暗くすれば良いという訳ではありません。グレアを意識した計画が必要です。

太陽光や車のヘッドライトなどの強い輝きが視界のなかに入ると、まぶしさを感じたり、ほかのものが見えにくくなったりする。この状態を「グレア」という。グレアが生じると人間は不快感を覚えるという。

グレアには「直接グレア」と「間接グレア(反射グレア)」に分類され、「直接グレア」はさらに「減能グレア(不能グレア)」と「深いグレア」に分けられます。

減能グレア(不能グレア)
太陽光やランプなどの光源が直接目に入った場合に、ものが見えにくくなること。対向車のヘッドライトが目に入って周囲が見えにくくなるなどが代表例。

世界で一番くわしい照明から引用

不快グレア
心理的な不快感から生まれるもの。ランプが露出した照明器具が多数ある部屋では、ランプが直接目に入らなくても、眩しすぎるという不快感を覚えることがある。

世界で一番くわしい照明から引用

間接グレア(反射グレア)
見る対象物に光源の光や輝きが映り、文字などが読みにくくなることである。テレビやパソコンのモニター画面に蛍光灯が入り込み、モニター内の文字や画像が見えにくくなることが例として挙げられる。

界で一番くわしい照明から引用

「陰翳礼讃」の落とし穴(デメリット)

照明を暗めにして、スポットを照らす灯りは部屋を美しくし、落ち着く空間になるのは間違いないです。しかし、デメリットもあります。

デメリット

  • 本が見づらい。
  • 老眼にはきつい。
  • 部屋に大勢がいる場合には不都合。
  • スマホ、タブレット類は眼精疲労となりやすい。

暗い場所目が悪くなる prproj

基本的に暗い部屋で本を見ても視力が下がらないとされています。ただ、疲れ目になりやすく、積極的はオススメしないとしています。

また、暗い部屋で電気スタンドなどを用意して本を見ると、少し体勢を変えたり、寝転んだりするときには不都合です。

まとめ

昔の家には、ほとんど和室がありました。いまは、リビングに和室コーナーがあるというのが多いようです。和室は照明を落とすと精神的な安定感を得られますし落ち着きます。

家に癒しの場所があることで、家での寛ぎに変化が生まれます。それには保護色に囲まれ、反射率50%を意識し、グレアを抑えることがポイントであると感じます。

しかし、何でもかんでも暗い部屋にするには、落ち着くというメリットはあるものの、デメリットもしっかりと存在しているのです。「陰翳礼讃」の書かれた時代は、スマホはもちろんありませんし、そもそも住まい方は現代とすこぶる相違しています。

デメリットも知って総合的な観点から照明計画をしましょう。

設備
スポンサーリンク
家づくりについて考える―中庭のある平屋暮らしー

コメント

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました