家づくりをしている最中は、家自体のことやローンのことに神経が集中し、「長期優良住宅」とはそもそもどういう仕組みなのかなど、考えていられないのが現実です。私がそうでした。
長期優良住宅制度は何故できたのか?
この本に長期優良住宅に触れられた箇所があるのですが、はじめはこの内容ピンとこなかったです。しかし、家づくりが終わって考える余裕ができたときに言っている意味が分かりました。
「長期優良住宅制度」とは、一般的な日本の住宅寿命が25年、リフォームまでは7年しかないことから、「海外の住宅並みに200年長持ちして、年数が経っても資産価値が下がらない家造りをしよう」と作られた法案で、認定されれば、税の優遇等が受けられたりします。これだけ見ると、長寿命の家を建てるために作られたようですが、実は、そうではありません。そもそも、「長期優良住宅制度」が、なぜできたのかといえば、大手メーカーを潰さないためです。
104頁から引用
新築住宅の着工件数は、著しく低下の一途をたどっており、共倒れになるため弱者である中小工務店に倒れてもらおうという制度であると説明しています。長期優良住宅使用以外には基本的に建ててはいけなくなるため、自然淘汰で工務店が減るというのです。
しかし、この内容だけでは納得いかないです。なぜなら、長期優良住宅の性能が低すぎるからです。
長期優良住宅の性能は低すぎる
長期優良住宅の性能基準は、取得条件を見る限り、性能面では全く優れてはいません。これはあとで説明しますが、保全記録を残しメンテナンスを義務付けることで長期的に住めることで優良としましょうといったことなのです。
長期優良住宅の条件
- 基礎の高さ40センチ以上
- 耐震等級2以上
- 断熱等級4(Ua値0.87以下)
- 面積75㎥以上
- 保全計画・保全記録
金利や税制面優遇のメリットは大きい
長期優良住宅への金銭面でのメリットは、様々あります。認定を受けないと損するように感じるほどです。
- 不動産取得税の減税
- 住宅ローン控除が期間延長
- 登録免許税の税率引き下げ
- すまい給付金
- 地域型住宅グリーン化事業補助金
- 住宅ローンの金利の優遇
- 固定資産税の減税
- 地震保険料の割引
政府は、「長期優良住宅」の認定を受けてもらうために金利や税制面での優遇で釣って、そのあとその性能が高くない家のリフォームを義務化させることで、家を長持ちさせようとするのです。そして、ハウスメーカー側は、家を建てたあとも施主と親密な関係を継続させメンテナンス稼ぐのです。ハウスメーカーの新規受注の着工件数で落ちた業績を、リフォーム売上でカバーしていくといった意図が見え隠れします。
認定を受けた人の義務と不履行への罰則
国土交通省の長期優良住宅のページには、「長期優良住宅の認定を受けられたみなさまへ」と題して認定後に行わなければいけない義務についてが記載されています。これは義務です。もし、維持保全の報告をしない、又は虚偽の報告をした者は、30万円以下の罰金に処せられるとの注意書きもされています。また、計画に従って建築やメンテナンスを行わない場合と、認定を行った所管行政庁から改善を求められ従わない場合は、「長期優良住宅認定」が取り消されるばかりか、それまで受けた優遇の返還を求められる可能性があります。
これが本当の目的です。
維持保全の義務化はリフォームを増やすため
2020年のハウスメーカーの住宅リフォーム売上ランキングの1位の積水ハウスですが、売上が1527.3億円。2017年が1355億円、2018年が1368.4億円、2019年が1414.2億円となっており年々業績は右肩上がりで絶好調です。また、売上トップ10には、住友不動産、大和ハウス、積水化学工業、住友林業、ミサワホーム、パナホームなど大手ハウスメーカーの名前が並んでいます。
大手ハウスメーカーは、初期保障などがあり、基本的に基本構造部分と雨漏りに対する保証があります。長期優良住宅はこのあとも点検を怠らないよう義務化することで、家を長持ちさせましょうということです。10年も経過すれば、何かに問題が出てくる。この点検で補修を推奨されメンテナンスを断れば、長期優良住宅だけでなく、住宅メーカーの補償期間が継続されないということも起きてくるのです。
延床面積35坪ほどの家の屋根、壁のペンキの塗り替えの原価は60~80万円ほどですが、単独での業者見積もりは、300~500万円というのが相場なのです。これほど高い料金でも、その工事にかかる期間はたったの1週間ほどです。いかに暴利であるかが、お分かりいただけると思います。10年保証とは、他社との競合を避けるためにあるといっても過言ではないのです。「長期優良住宅制度」の履歴義務により、10年保証は、より業者有利となった。。。
出典:「住宅展示場では教えてくれない本当のこと」108頁
長期優良住宅にすることで、必要以上にメンテナンスを促される可能性が高まり、保証を受けるために拒むこともできない可能性があります。法律に基づくこの保証制度は、あくまでも基本構造部分と雨漏りにしか対応していないです。雨漏りが起こっていなくても、雨漏りリスクがあると判断されリフォームを促されると断ることは難しくなります。
家を実際に建てるハウスメーカーだけでなく、その材料を供給する資材メーカーである大手企業には、必ずと言っていいほど国土交通省等の官僚の天下りが数多く在籍しています。しかも、その多くは役員待遇です。
出典:「住宅展示場では教えてくれない本当のこと」84頁
このような構造は、住宅業界だけではないため仕方ないですが、官僚は頭が良いと半ば諦めるしかありません。
長期優良住宅の認定は受けるべきか
まずはじめに、長期優良住宅が標準仕様の場合は要注意です。リフォームを狙っていないか勘ぐってしまいます。なぜなら、先ほど言ったように認定基準の性能は全く高くないため、わざわざ標準にするまでもないからです。あくまでも、長期優良住宅にするかは、施主が選択するべきものです。
私の場合は、長期優良住宅認定を受けましたが、地域型住宅グリーン化事業補助金を取得できたため、金銭的な面だけをみるとかなりメリットがありました。
それぞれ施主の条件によって控除額などの金銭メリットがどの程度になるかは幅がありますが、そもそも金銭面からのメリットがあるようにこの制度はつくられているはずです。(計算することが面倒になるよう故意に条件を複雑にしているように感じますが)
結論を言うと、金銭面からは地域型住宅グリーン化事業補助金があるなら認定を受け、もしなくても借入金額が大きい場合は、メリットは大きいです。
長期優良住宅の認定を受けた場合は、無駄なリフォームやメンテナンスを促されないよう、また自らも点検ができるような知識をつけて対策をしていきましょう。
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