中庭のある家に住んでみた感想

間取り
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平屋で口の字型の中庭のある家の住み心地レポートです。中庭のある家に暮らしてみて、やっぱり中庭採用して良かったとつくづく思っている。中庭をつくることを決める前は、建築費用が余分にかかる、中庭つくっても実際使わないなどネガティブな考えや意見もあるため、自分にとっては必要かと自問した。でも、どういった家がほしいのかが明確になったら、全く躊躇はなくなった。逆に言うと中庭がない家なら賃貸や建売りで良いとまで思ってきた。

平凡な生活が楽しみになる空間

母の実家は京都にある町屋でした。小学校の頃は夏休みになると、1カ月近くこの町屋で過ごしました。隣家と家は合体していると思えるほど、隣の壁との隙間がありません。間口は狭く細長い敷地に中庭がありました。間口はちょうど乗用車を横付けで一台駐車して、人が通れる程度。奥行は細長く15メートルほどあったでしょうか。

そこに長細い家が建っていたのですが、敷地の中間より奥寄りに中庭がありました。2-3メートルなので、それほど外から光が入る訳でもなく、何か湿気っぽく苔が生えていそうな独特の雰囲気。その中庭の奥の古い建物の2階に祖母の部屋がありました。横殴りの雨の日などは奥の部屋に行くのに、家の敷地内なのに傘をさす、また老人には不親切なほど急勾配な2階へと続く階段があり、なんとも不便な間取りでした。京都の蒸し暑い夏にクーラーもなく、風が微かになびくその中庭に、桶を置いて水風呂に入っていた叔母の姿を懐かしく思います。

月日は経ち、ドイツのハケシェ・ヘーフェ、色々なヨーロッパにあるパティオなどを見ているとオシャレな西洋風のカフェスタイルへの憧れが強くなりました。

そんなとき、2014年に世界遺産にもなっている「福建土楼」を訪れました。厦門からバスに乗り2時間以上してから土楼らしきものが見え始めました。かなり、広範囲に点在しているのだと分かりました。円形、楕円形、方形と様々な形をした巨大な要塞なような外観でインパクトがある土楼。中庭のある集合住宅。東方のユダヤ人ともいわれる「客家(はっか)」の伝統的な住居です。

観光していると、部屋の持ち主だという人が寄って来て、更にお金を払うと部屋を見せると言われ、上の階を見学しました。これが、部屋から見えた土楼の外側の風景。

集合住宅にある中庭は、憩いとコミュニケーションとしての場であったのでしょう。東洋風の中庭は、かつて小学生のころ幾夏も過ごした京都町屋の中庭を思い起こさせました。

よく考えると中庭への憧れは、子供のころに不便だと感じた中庭が、却って記憶の片隅に引っついて離れないものとして脳裏に焼き付いていたのかもしれません。

中庭に対する考え方(あくまでも個人的視点)

建築費用を抑えようと、建坪を犠牲にして中庭を採用。比重として中庭>居住スペースだったため。設計段階で、何度も中庭を狭くすることや配置変更などを提案される。

中庭が欲しいから家を建てるのであって、家を建て中庭を採用するのではない。

こんなことは一言も発しませんでしたが、考えは決まっていたので、頑なに中庭を犠牲にはせず、建坪や設備を妥協しますとはっきり伝えました。あまり好まれない施主だったと思います。

中庭の広さ

4メートル(南北)×3メートル(東西)の中庭。中庭の南側の窓から日射取得できる場所に居間があり、平屋ということもあり、この4メートルで冬場でも午前8時~9時には居間に中庭からの日が当たる。中庭のある家の施行事例を本やネットなどで見ると、どれも立派だが、うちは最低限の広さだと思う。

住んでみて、これ以上小さいと四方が壁なため、圧迫感があるのではと感じてしまう。もちろん、この広さでは、子供が走り回ることもできないが、小学生ぐらいまでの子供なら中庭でプールを楽しむには充分な広さだと思う。うちはガーデンテーブルセットを置いているほか、洗濯を干すスペースとしても使っています。

中庭の用途レポート(1年間)

1月-2月

寒いので使う機会は少ない。しかし、晴れの日の正午~3時ごろは、風も遮られるため部屋にいるより却って暖かく感じたりもする。

3月-4月

コロナ禍の影響で在宅ワークが増え中庭で過ごす時間が増えた。この時期が中庭で過ごすのに一番適している。2カ月間で5回ほど中庭バーベキューをした。

5月-6月

5月も引き続き良く使ったが、紫外線が強くなるため直射日光は避ける。

7月-8月

早起きした場合には、中庭で読書やスマホ弄りなどで過ごす。午前8時以降は出ない。午後7時以降は思ったより過ごしやすい。すぐクーラーの効いた部屋に戻れる心理的作用が効いているのかも。

9月-10月

この期間も、バーベキューを3回ほどした。秋晴れの日は、部屋から中庭の紅葉を見てぼんやりすることも。中庭で読書。ナンテンが紅葉し始めている。紅葉する木は、ほとんどが落葉樹であるが、落葉が少なく冬の間ずっと紅葉し続けるナンテン。風情が感じられ、満足度が高い。

11月-12月

11月は、中庭で過ごす時間は多かった。11月って意外と暖かいんだな~と改めて感じられた。12月から寒さを感じて中庭を使わなくなる。

中庭を作るかはこれを判断基準にすべし

このなかで該当する項目が8つ以上のなら、中庭をつくっても後悔はないと個人的には考えている。

  • 家をつくるなら中庭がほしいとずっと思っていた。
  • アウトドア派。
  • 家に喫茶店のテラス席のようなものがほしい。
  • 居住スペースを削ってもよい。(費用を抑えたい人の場合)
  • 中庭の追加費用は惜しまない。
  • プライベートを気にするほうだ。
  • 中庭でどう過ごしたいか具体的な考えがある。
  • ユニークな家が好き。
  • 変わった間取りが好き。
  • 土地の広さが50坪以上(駐車スペース2台の場合)

こんな人は中庭を使わなくなるであろう

家づくりを考えるとき、立地などの条件がなければ、田舎暮らしで窓から遠くまで見渡せる風景があるのが理想でした。住宅街では、考えられないことです。私の場合は、この代替案として中庭を考えました。

実際に暮らしてみると、中庭のポイントは、ユニークな間取りになるということと、プライベートな空間ができるという2点だと実感しています。庭に出てお隣さんと鉢合わせになるということがないし、中庭へ向かう窓にはカーテンも要らないし、半端ない開放感があります。(特に西側向きの窓には日射遮蔽対策が必要ですが)開放感があるといっても、目の前は壁、田舎のように遠くまで見渡すことはできません。しかし、中庭の風に揺れる樹木が、上空のゆっくりと動く雲が見えるだけで十分に満足でき、家に居ながら自然を感じて生活できます。

読書をするにしても、喫茶店で見知らぬ人に見られても全く気になりませんが、庭で読書をして近所の人が通るとなんだか集中できそうにありません。プライベートが確保できない庭は私には不向きと感じました。そして、中庭で読書するのが何より楽しみになりました。

上記の内容に共感しない、または首を傾げる人は、おそらく中庭をつくっても使わなくなる人だと思います。中庭をつくろうと考えるひとは一定数いるでしょうが、採用しない人のほとんどは、費用が関係していると思います。私には、それらを上回る中庭への憧れがあったのでしょう。少しでも、中庭を考えている人の参考になれば幸いです。

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