家づくりをするときに、とても気になる欠陥住宅の実態。この問題は、建売りやローコストメーカーだけでなく、大手ハウスメーカーから優良といわれる工務店であっても、充分に起こりうるリスクがあると考えています。
へーベルハウス告発動画を見て思うこと
この動画、よくある欠陥住宅にある内容なのですが、へーベルハウスとはっきり社名を出したことにより反響があるようです。
この家は20年以上前のもののようです。ヘーベル版(ALC)に問題があるような指摘ですが、断熱は重要視されていない時代です。次に壁内で気流が発生しているので断熱効果を欠くとの指摘ですが、全くその通りでしょう。しかし、へーベルハウス側からすると、気密の必要性が認知されていなかったときのことを、今ごろになって言われると、どう返答すればよいのか困ってしまうのでしょう。どう回答しても突っ込みどころ満載です。
現在→高断熱は必須条件。気密を取らないと断熱性能は担保できない。
この動画、建築業界が20年で根本的な断熱・気密への考え方を180度変えてしまったことへの抗議のように感じました。ただ、それをへーベルハウスだけに特定して攻撃するのは、どうでしょう?少なくともすでにへーベルハウスで家を建てた人は、気分が悪く激怒するでしょう。この指摘の仕方になると、どこのハウスメーカー・工務店にも問題が出てきそうです。
次に施工の仕方ですが、これもへーベルハウスだけの問題ではないです。
階段の一番下と上の段差に8mmの誤差がある。現場の監督の重要性が、垣間見れる指摘でしょう。色んなところに手抜き工事がされている可能性があると思われます。
一条工務店の営業担当者が話した内容
私が、一条工務店のモデルハウスに見学に行ったときのことです。営業担当者(40-50代)が私に話してくれた内容(営業トーク?)は衝撃的なものでした。
家を見た感想はどうでしたか?
すばらしい性能だと思います。
性能は重要だと思いますよ。私は、建売り業界にいたことがあるので知っていますが、建売り住宅の販売価格は、半分は利益ですよ。
・・・・・
モデルハウスの近くで2000万円の建売り住宅を見たことがありました。2000万円の販売価格なら、1000万円が利益?土地はどんなに少なく見積もっても600万円。言葉通りに信じるなら、400万円で家が建つことになります。
事実かどうかはさておき、棟梁がいて大工が現場で施工していたころと違い、家づくりは工業製品化したため、ほとんどを工場でつくり、出来上がったものが運ばれてくるのが実態です。そのため、家づくりは以前に比べ技術力が必要ではなくなりました。その結果、モラルの低下と価格競争によって日常化した手抜きが、通弊となっているのが現実でしょう。
手抜きをしている下請けの現場では、メーカーからの下請けへの発注金額では、これ以上、時間(手間)をかけられないので仕方ないという声が聞かれるといいます。
例:雨の日の生コンクリート打ち。発注金額から工程を先延ばしできない。
ホームインスペクターからみた建築業界
この本の筆者は、ホームインスペクターという「施主から依頼を受け、設計事務所やハウスメーカー・工務店の業務を施主に代わって検査、監督する中立の第三者」の仕事をしているため、設計事務所やハウスメーカー・工務店の杜撰さに焦点を当てた内容になっています。
正直この内容を知ると、極端にいうと家を建てたなくなってしまいます。というか、「こんなにネガティブに考える必要性はあるのか?」などと思ってしまいます。しかし、実際には欠陥住宅は、少なくはないようです。
- 配置を間違えていても気づかない現場監督
- 現場の施行のことが分からない一級建築士
- 構造を知らない建築設計士
- コンクリートの特性を知らない基礎業者
- 実力の程度差が大きいカタカナ肩書きのアドバイザー
- 地下室のコンクリート工事が完成したけどヒビだらけ
- 梁の中央部に貫通したヒビがある
- 下地に止まっていない石膏ボード
- 電気がきていないコンセント
- 隙間だらけの断熱材
- 窓を開けると照明器具にぶつかるサッシ
- 間違っているスペーサーの使用方法
- 土間コンクリートが宙に浮いている玄関ポーチ
- 上棟したら2階の床下地が図面と違うことが発覚
- 配水管が土台のアンカーボルトが役に立っていない
- 子供世帯の住宅を親世帯に増築したのに往来ができない廊下
- 床のフローリングの色が決めた色と違う
- 夏休みに旅行から帰ってきたら台所がカビだらけ
現場の体制は大きく分けて、下請け一括発注型と直施工型があります。下請け一括発注型は、文字どおり現場は下請けに丸投げする状態で、元請けである工事担当者の仕事は顧客管理・資材発注・近隣対策が主な業務になります。つまり工程管理と品質管理は下請けの任せきりといっても過言ではないのです。元請けの工事担当者は定期巡回と称して、担当している現場の節目の工程の時期に現場に出向き、何か問題がないかを確認することになっています。けれども私が検査に立ち入る場合でも、元請けの工事担当者は現場のことを把握しておらず、下請け工務店の監督に聞いたほうが、話が早いことを多いのが実情です。・・・(中略)一方、直施工型の場合は、下請け工務店に一括発注ではなく、職人別の発注形式となります。つまり工事担当者は直接、基礎工事業者・大工・設備業者・内装業者などの管理をしていかなければなりません。ですからおのずと工事担当者の1棟当たりの業務量は、下請け一括発注型に比べれば増大するので、10棟もの現場を管理するのは不可能なわけです。
101、102頁から引用
「下請け一括発注型」=下請けに任せきりになりやすい。
「直施工型」=自社で職人を管理するため、現場担当者は非常に忙しくなる。
問題が必ず起こるというのではなく、起こりやすくなる、また担当者の性格や仕事に対する姿勢により管理は大きく左右される構造です。
悪徳業者が跋扈しているというのではなく、業界の構造が欠陥住宅をつくり出しているのです。
まとめ
家を建てるとき、土台、構造、断熱、気密などメーカーカタログに書いてある内容を比べて、決定しても、そのカタログの内容通りになるかは現場にかかっています。
C値は測定すれば分かりますが、Ua値などは理論上の数値にすぎません。それゆえ、住宅は理論構造上、設計に何の問題がなくても工事に手抜きがあれば、ちゃんとした家は建たないということです。
さらに突っ込んで言うなら、超高性能住宅を手掛けるメーカーや工務店も優秀な大工を抱えているとは思いますが、1つの見落とし、過ちが致命傷になりかねないということです。ただ、こういったことは、何も建築業界だけに限ったことではなく命に係わる医療業界なども国民の監視が厳しいです。でもどうして住宅ではこんなに施主らの想いが強いのか?それは、住宅は高額で何十年もローンを抱えるためでしょう。感情的になるのも否定できません。。。
コメント